JR乗りつぶし旅行~山陰本線~(前編) 

 今月13日にノーマスク解禁が発表され、長い長いコロナ禍もついに終焉の兆しが見えた春。
 思い起こせば3年前の今ごろは、時ならぬコロナ禍と自粛モードに怯えながら、駆け込みでイルカを見に行ったり最後の鉄分補給をしに行ったりしたものです。
 そして、その後は長いコロナトンネル。自粛モードで利用客が激減した鉄道会社は「ひみつの平日パス」とか「どこでもきっぷ」といったようなバーゲン商品を相次いで販売していたものですが、コロナ禍終焉とともにそろそろそれも終わりそう・・・
 そう思っていたところ、JR西日本が「どこまで4DAYS」という最後の(?)バーゲン商品を販売するとのニュースが飛び込んできました。JR西日本管内の「新幹線以外の」全路線が4日間乗り放題で¥9,800ナリ。青春18きっぷと異なり、特急券をプラスすれば特急列車にも乗れるというのがミソ。

 このニュースを聞いて、ふと思いついたのが山陰本線完乗の旅です。
 今や全国最長の路線となった山陰本線。元中央公論社常務取締役にして紀行作家でもあった故宮脇俊三さんが「偉大なるローカル線」と評したとおり、山陽本線とともに中国地方を横断する全長673.8kmの長大路線ながら、大半が単線非電化という閑散ぶり。まともに片道乗車券で乗ろうとすると、この区間だけでお値段¥10,010ナリ。青春18きっぷを使えばもっと安くなりますが、あいにくこの山陰本線は普通列車が絶望的に少ない区間もあって、特急に乗らないと数日かけての「旅」になっちゃいます。そんなわけで「いつか乗りに行こう」と思いつつ時間ばかり過ぎていたところでした。
 そこへ降ってきた「どこまで4DAYS」販売のニュース。これは山陰本線走破の絶好の機会!
 ようやく重い腰を上げて乗りに行くことにしました。

東海道新幹線 のぞみ287号
  東京
(06:45)→京都(08:56)

列車番号9287A N700系電車(X79編成)

 お家から始発列車に揺られてたどり着いたのは早朝の東京駅。飛び石4連休だけに、6時台なのにかなりの混雑です。大混雑の新幹線窓口を尻目にえきねっとで予約したチケットを引き取ってホームへ向かいます。
 東海道新幹線に乗るのは、↑のイルカを見に行ったときが最後。もっと言うと、実は「のぞみ号」に乗るのは生まれて初めてです。長距離移動は基本ヒコーキだし、短距離移動なら「こだま号」ばかりですからね。学生時代には新幹線で京都や小倉へ行ったこともありましたけど、当時は「ひかり号」。「のぞみ号」が誕生する前でした・・・
 乗車したのはN700系2000番台。旧来型のN700系0番台に対し、2011年登場のN700系1000番台(通称「N700A」)と同等の走行性能を持たせるための改造を施した車両です。新造されたN700Aは車両横にある「A」のロゴが大きいのに対し、2000番台は「A」が小さめ。シートのデザインも従来型(0番台)のままだそうです。1000番台に乗ったことがないから知らないけど。

 乗車したら、まずは腹ごしらえ。ホームで買ったのは品川駅の駅弁「貝づくし」。

 その名のとおり、茶飯の上に「あさり」「しじみ」「はまぐり」「ほたて」「イタヤガイ」の5種の貝が乗ったお弁当。しっかりと茶飯の上には海苔が敷いてあるのがニクイです。江戸時代には品川沖でこういった貝がたくさんとれたんでしょうねぇ・・・今じゃ品川で潮干狩りなんて考えられないけど。
 某ネット記事では、この駅弁で貝をツマミに酒を飲んでシメに茶飯をいただく・・・なんて食べ方が紹介されてましたけど、旅に始めにソレをやると旅が続かなくなっちゃうので大人しくノンアルコールでいただきました(笑)

 京都駅には定刻に到着。東京駅から2時間ちょっとで京都に来られる、しかもそんな列車がひっきりなしに走っているなんてすごい時代ですねぇ。オイラの学生時代なんて、東京駅を23時40分に出発する夜行の鈍行列車から乗り継ぎを重ねて京都着は翌朝8時過ぎだったっていうのに。

 京都駅ではいったん改札口を出てみどりの窓口へ。大行列を尻目に、売り場内に設置された「みどりの券売機」(←JR東日本でいう指定席券売機です。)でネット予約したチケットを発券します。
 今回利用する「どこまで4DAYS」はJR西日本の予約サイト「e5489」限定販売でして、受け取りもJR西日本の券売機じゃないとできないんですよね。便利なんだか不便なんだか。

山陰本線 きのさき3号
  京都
(09:25)→福知山(10:40)

列車番号6003M 289系電車(FH302編成)

 さて、いよいよ山陰本線の旅が始まります。

 京都駅の山陰本線専用ホーム31番線~34番線は、始発駅らしく頭端式。行き止まりの線路が4本刺さっています。
 山陰本線のうち嵯峨野線と呼ばれる京都から園部までの区間は通勤路線でして、普通列車が発着する32番線は土曜日なのに長蛇の列ができてました。特急列車も通勤利用を見越してなのか、全車指定席で自由席はなし。東京の中央線特急と同様にチケットレスを導入しています。なので、ワタシもe5489で予め指定席特急券をチケットレス購入してありました。
 特急「きのさき3号」は7両編成。普段は4両らしいのですが、さすがに飛び石連休の繁忙期ということでこの日は付属編成3両を増結した7両編成になっていました(↑基本編成の編成番号はチェックし忘れました。)。ガラガラに空いてましたけどね。
 使用車両は289系。元は北陸本線の特急「しらさぎ」用交直両用車両683系2000番台でして、北陸新幹線開業により運転区間が短縮され余剰となったものを直流専用改造したものです。

 京都駅を出発するとしばらくは京都市街を走りますが、10分も走ると住宅地、そして緑が増えてきます。嵯峨嵐山駅を通過すると、トンネル続きに。トンネルとトンネルの合間には保津峡の絶景が垣間見えます。この区間、昔は保津川沿いの非電化単線区間だったものが、1989年に現在のトンネル続きの路線へ切り替わりました。一方、旧線は平成3年にトロッコ列車が走る観光路線「嵯峨野観光鉄道」として再出発。コロナ禍前は利用客の3分の1が外国人というインバウンドを象徴する存在になっていたようです。
 保津峡を抜けると里山をバックに住宅地が広がるのどかな景色に。京都駅から30分弱で嵯峨野線区間の終着である園部駅に到着します。複線区間はここまででして、園部駅を出ると単線となります。普通列車の本数も激減して、ローカル線っぽさ全開です。
 舞鶴線との接続駅である綾部駅から再び複線。そして京都駅から1時間ちょっとで終点の福知山駅に到着しました。

山陰本線 こうのとり3号
  福知山
(10:47)→城崎温泉(11:52)

列車番号3003M 289系電車(FG408+FH304編成)

 福知山駅は、大阪方面から来る福知山線との接続駅。ここから電化区間の終点である城崎温泉駅までは、京都発着の特急「きのさき」と新大阪発着の特急「こうのとり」が交互に運転しています。ワタシが乗った「きのさき3号」は福知山駅止まりなので、ここから先は接続する「こうのとり3号」に乗り換え。なお、特急料金は基本「列車ごと」なのですが、この福知山駅での乗り継ぎの場合は特例で乗り継いでも直通列車と同額で計算されます。
 「きのさき3号」はガラガラでしたが、乗り継いだ「こうのとり3号」はかなりの混雑でした。
 福知山から城崎温泉までは、里山の懐かしい景色が広がる田舎道。列車は山あいをゆっくりと走ります。

山陰本線 普通 城崎温泉(11:56)→鳥取(13:57)
列車番号531D キハ40系気動車(キハ47-139+キハ47-13)

 福知山駅から1時間ほどで城崎温泉駅に到着。
 この先は非電化区間なので、ディーゼル気動車に乗り換えます。お向かいのホームに停まっていたのは懐かしの真っ赤なキハ47形。北海道では絶滅危惧種ですが、西日本ではまだまだバリバリの現役です。

 車内はこんな感じ。18きっぷシーズンだけに「同業者」もけっこう乗っていましたが、それでも4人掛けボックスシートに2人ずつ座って全部が埋まる程度でした。高校生も数人乗っていましたね。これで通うのって大変だろうなぁ。

 城崎温泉駅から鳥取駅までは、リアス式海岸沿いにのんびり走ります。トンネルを抜けると谷間に集落があって駅があり、再びトンネルに入って・・・といった感じ。ところどころ山中のトンネル前後に急カーブなんかもあって、25km/hの速度制限がかかってました。一応、播但線からの特急「はまかぜ」も1日2本(うち1本は香住駅止まり)あるんだけど、ほぼ鈍行オンリーのローカル線区間です。

 城崎温泉駅から50分ほどで餘部駅に到着します。
 長谷川の河口に面した谷あいの余部集落にある餘部駅。山陰本線は集落がある谷間を高さ約41mの橋でまたぎます。
 以前は真っ赤な鉄製のトレッスル橋がかかりその光景は東洋一ともいわれたほどでしたが、老朽化により2010年に運行終了、解体開始され、同年から現在のコンクリート橋になっています。

 旧橋も餘部駅側に隣接する形で僅かに残してあり、「余部鉄橋「空の駅」」という観光展望台となっています。そのせいか、駅はけっこう賑わってましたね。列車も1分ちょっと停車してくれていました。

 餘部駅から先は海からやや離れた山の中を走ります。松葉ガニで有名な浜坂駅で列車交換のために10分ほど停車した後、再びトコトコと山道を走行。午後2時前に鳥取駅に到着しました。

 鳥取駅は2面4線の高架駅。改札口の外には高架下を利用した商業施設「シャミネ」なんかもあったりしてなかなか立派です。

 でも、やっぱり本数が少なすぎて利用客は少ないんでしょうね。県庁所在地駅なのに自動改札はありませんでした。同じ鳥取県でも米子駅はICOCAエリアに入っていて自動改札機もあるんですけどね。

 さて、鳥取といえばカニ。改札外の売店で名物駅弁「かに寿し」をいただきます。

 贅沢にカニの身を敷き詰めたお弁当。付け合わせの奈良漬と塩昆布がいい感じでした。

 かに寿しを食べ終えてホームに戻ると、米子行きの普通列車となるキハ120形が停車中。これに乗って行ってもいいのですが、途中で特急の通過待ちがあり米子着は1時間以上遅くなるので1,000エン課金して特急を利用することにしました。

山陰本線 特急スーパーまつかぜ7号
  鳥取
(15:09)→米子(16:13)

列車番号2007D キハ187系0番台気動車(3編成)

 やってきたのはキハ187系のスーパーまつかぜ7号。
 キハ187系は山陰本線高速化の切り札として製造された特急用気動車。勾配や曲線が多い山陰本線で高速化を図るため、加速性能に優れた大出力エンジン2基を乗せ制御振り子式機構を搭載しており、これらにより最高速度120~130km/hを実現。鳥取~米子間92.7kmを65分前後で駆け抜けます。
 でもね、この列車はたったの2両編成。しかも米子寄りの1号車は指定席なので、自由席は鳥取寄りの2号車のみ。当然、かなりの混雑でした。

 さて、鳥取駅から出雲市あたりまでは鳥取平野、倉吉平野、米子平野、出雲平野と沖積平野が連続して続きます。平野と平野の間には山地があるものの基本的には線形は良く、1線スルー化などの高速化工事もされていて列車は快適にすっ飛ばします。

 夕方4時過ぎに米子駅へ到着。時間帯の影響もあるんでしょうけど、鳥取駅よりよっぽど人が多かったです。山陰から山陽へ抜ける主要ルートである伯備線特急「やくも」の発着駅だからでしょうね。折よく入線してきた岡山行き特急やくも24号は、国鉄リバイバル車両でした。

 その伯備線へ乗り換える人の大混雑を尻目に、ワタシはひっそりとした0番線へ。何やら懐かしいイラストを身にまとったキハ40形が佇んでいました。

境線 普通  米子(16:31)→境港(17:17)
列車番号1649K キハ40形気動車(キハ40-2115+40-2095)

 境線は米子駅から隠岐諸島への連絡船が発着する境港駅までを結ぶ路線。わずか17.9kmの間に16駅もあり、まるで路面電車のような雰囲気があります。そのせいで、米子駅と境港駅との間の所要時間は50分弱。一応高速化工事はしてあるのだそうですが、あまりに駅の間隔が短すぎてスピードを出せないみたいですね。それに単線なので列車交換もしなきゃだし。

 境線の終着駅である境港市は「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる水木しげるの出身地。それにちなんで、列車は「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターを内外に描いたラッピング列車となっています。

 境線が発着する米子駅0番線ホームにはこんな看板も。

 ベンチにもねずみ男のイラストが。列車のアナウンスもアニメの声優さんが担当していました。

 境線は米子近辺の生活路線となっているようで、通学客や買い物帰りのお年寄りなどがたくさん乗っていました。区間によっては立ち客が出るほどの混雑ぶり。一方で、途中には米子空港駅があり文字どおり米子空港に直結(徒歩5分)していることから観光客もけっこういました。米子空港駅と米子駅との間の所要時間と本数をもっとなんとかすれば、利用客は増えそうですけどねぇ・・・

 終点の境港駅に到着。終点までかなりの数の乗客がいましたね。

 駅前。小さな駅ですけど、キレイです。駅前には鬼太郎キャラクターのオブジェが。駅から伸びる道も「水木しげるロード」といってあちこちにオブジェがありました。

 今宵のお宿はこちら「夕凪の湯 御宿野乃」。境港駅の目の前にあります。飛び石連休かつ全国旅行支援シーズンだけに、素泊まりでも¥14,400でした。高っ!
 もちろんココからじゃらんの期間限定ポイントなんかをつぎ込んで、それでも¥9,900です・・・

 そんなお高いお宿なのに、フロントは長蛇の列。今の列車の乗客たちに加えて、団体客なんかもいたっぽいです。20分ほど待たされてようやくチェックインしたあとは、フロント前の靴箱(学校の昇降口みたいな感じ。)に靴をしまって、裸足でお部屋に向かいます。

 お部屋はこんな感じ。和室だけどベッドがあります。

 トイレは独立していて、もちろんウォシュレットも付いてます。

 トイレの横にはシャワーブース。浴室はなく、代わりに温泉の大浴場(露天風呂付き)が最上階にあります。ちゃんと洗い場には仕切りも付いていて快適でした。

 ミネラルウォーターの500mlペットボトルと、お茶菓子代わりのゼリーが冷蔵庫にありました。

 食事が付いていないので、夕食を求めてお外へ。近くの食堂で海鮮丼をいただいても良かったのですが、駅からスーパーマーケットが見えたのを思い出してそちらへ。

 戦利品がこちら。このほかに翌朝の朝飯用におにぎり3つを付けてお値段¥2,700ナリ。

 「上ブリ」の握り寿司は絶品でした♪

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