ヴェネツィアにて(その3)

 翌朝。いよいよヴェネツィアでの4日間がスタートです。いつもの癖か時差ぼけか、6時前に目が覚めました。朝食は7時半からなので、さっとシャワーを浴びてからのんびりお散歩に出かけましょう。
 ヴェネツィア最大の港であるS.Zaccariaからサンマルコ広場にかけてのSchiavoni河岸は、日中から夜にかけて歩行者天国の秋葉原並みに大混雑するのですが、さすがに早朝のこの時間だとガラガラです。

 先にも書いたとおり一切自動車が乗り入れられないヴェネツィア。荷物の運搬は網の目のように張り巡らされた水路を利用したボートに頼るしかありません。ちなみに、ボートから荷を下ろした後はリヤカーが唯一の交通手段。ごみの収集も同様です。

 有名な「ため息橋」。日中は記念写真を撮る観光客でひっきりなしなのですが、今の時間はガラガラ。ゆっくりと街中を散策するのは朝に限りますね。

 Ducale宮殿の先でSchiavoni河岸から右に曲がると、サンマルコ小広場。有名な鐘楼Campanileがそびえています。

 朝日を浴びて輝くサンマルコ小広場の入り口にあるテオドロスとマルコの石柱。ちなみに、この2つの石柱の間で、大昔には絞首刑が執行されていたのだとか。


 小広場の奥を左に進むと、そこにあるのがサンマルコ広場。その昔、ナポレオンが敷石の幾何学模様に感嘆して「世界一美しい広場」と称賛したという伝説があります。
 もっとも、その美しい敷石も、日中は観光客に埋め尽くされてまったく見ることができないのですが・・・

 サンマルコ広場の正面にあるのがサンマルコ寺院です。ヴェネツィアのシンボルともいえるこの寺院ですが、それゆえに観光客の行列がものすごくてですね、結局中には入れませんでした。後で調べたら、ネットで予約制になってるそうです。

 さて、そろそろお腹も空いてきたので帰りましょうか。
 サンマルコ小広場の東側にあるのがドゥカーレ宮殿。一部、工事中みたいですね。

 Schiavoni河岸から眺めたDucale宮殿。こちらは予めチケットを買っておいたので、後で見に行きましょう。

 ホテルに戻ってから朝食会場へ。ちょうど、お部屋のお向かいの部屋でした。
 とっても小ぢんまりした5畳ほどの小部屋が食堂。テーブルにつくと、元気な女性が”Buongiorno, Signore!”と元気な挨拶をしてくれます。その後、ぺらぺらとイタリア語であれこれ言われたのですが、初日は何が何やらわからず・・・結局、ルームナンバーを尋ねられてたのと、ドリンクメニューをきかれてたようです。ちなみに、ドリンクはフリーで飲める水・ジュース・牛乳などと、女性が注文して淹れてくれるコーヒー(エスプレッソ、カフェラテなどから選べます。甘いのが苦手なワタシは、いつも「Caffe Americano」にしてました。普通のブレンドコーヒーがあるのかどうかは不明です。)から選べます。
 フードはクロワッサンなどのパン3種とフリースタイルのハム・チーズ・フルーツ類が中心。ゆで卵とかシリアルなどもありましたが、ホットミールは無し。典型的なContinental Breakfastですね。

 朝食を済ませたら、いよいよお出かけ。今日はサンマルコ広場を巡ってみます。これだけでも半日以上潰れますので・・・
 まずは、先ほど散歩したサンマルコ小広場へ。Ducale宮殿から見て回りましょう。

 Ducale宮殿とお向かいにあるコッレール博物館は、あらかじめインターネットでチケットが購入できます。なので、入り口ではパソコンから印刷するかスマホ画面に表示したバウチャーのバーコードを示せばOK。チケットの購入窓口もすごい列ができるので、あらかじめ買っておく方が便利です。

 Ducale宮殿は、中世に地中海で権勢を誇ったヴェネツィア共和国の総督の居城であるとともに、議会、裁判所、行政官庁でもあった場所。地中海交易で凄まじい富をなしたヴェネツィア共和国ですが、その富の凄さを実感できる場所でもあります。
 入り口を入ると、そこにあるのが中庭。正面のブロンズの井戸は、1500年代のものだとか。日本じゃまだ信長の時代です・・・

 アーチの回廊。ここから先は、荷物を預けろと言われるのでクロークにカバンを預けます。なお、フラッシュを炊かなければ写真撮影はOK(たいていの観光施設は同じでした。)なので、カメラ片手に先へと進みます。

 入り口の階段を踊り場で折り返すと、そこにあるのが黄金階段。16世紀の傑作なんだとか。

 ここから先は、ひたすら彫刻や宗教画のオンパレード。これが、フツーに、今で言う官庁や裁判所の天井や壁だったというのだから凄すぎます。

 いきなり登場するのが、1575年ころのヴェロネーゼの作品「エウロペの略奪」。

 4階の「4つの扉の間」にある「祈りを捧げるグリマーニ総督」。ティツィアーノの1555年の作品だそうで、といっても美術とは無縁のワタクシにはよくわかりませんが、とにかくそんな重文クラスの絵がシレっと飾ってあるのが凄すぎです。

 謁見の間。
 この部屋で、たまたま開催されていた日本語ツアーを見かけたので、こっそりと後を付いて回りました(笑)

 正面にあるのがヴェロネーゼ1581年の作品「レパントの海戦の勝利を感謝するヴェニエル総督」だそうです。

 横の壁にも見事な絵画がぎっしり。

 現代のワタシですら唖然とする光景ですから、信長の時代にここを訪れた天正遣欧使節の少年たちはどう思ったんでしょうね。

 元老院の間。正面はティントレットの「天使に囲まれた死せるキリストを悼む二人のドージェ」という長いタイトルの絵画。

 そして天井にはこれまたティントレットの「ヴェネツィア称揚」。

 ヴェネツィア共和国の内閣にあたる十人委員会の間。

 何やら、怖そうな格子扉とそっけない階段。

 薄暗い部屋に出ました。

 壁には何やら大きな絵が。
 ネットでも少し調べてみたのですが、作者や題名の分からない絵が大半です。

 でっかい大広間「大評議の間」にきました。2000人を収容できるといわれるこの広間の正面にあるのが、世界最大の油絵と言われるティントレットの「天国」。4年をかけて描かれたそうです。

 まあ、とにかくデカすぎてフレームに入り切りません・・・

 壁の上部には歴代のドージェ(総督)の肖像画があるのですが、一か所だけ黒く塗りつぶされています。ここに描かれていたはずの方は、第55代の総督Marino Falieroさん。1354年(日本だと南北朝時代)にDogeに選出されたのですが、その時点ですでに69歳。少々ボケがはじまっていたのかクーデターを企てて翌1355年4月17日に処刑されちゃったそうです。そもそも、なんでそんなヒトを選んじゃったんですかね~?

 大評議の間とそれに続く投票の間の壁には、一面にヴェネツィアの戦功を称賛する絵画が並んでます。

 レパントの海戦を描いたのでしょうか。ヴェネツィアの象徴ともいえるガレー船の様子が分かりますね。

 こちらも同じようなテーマ。1000年を超えるヴェネツィアの歴史は海戦の歴史でもあるんですね。

 さて、大評議の間の祭壇の陰に、こんな怪しげな出入り口がありました。

 キンキラキンの世界から、一転して地味ぃな通路が続きます。

 こんな薄汚い階段を進んでいくと・・・

 こんな通路に出ました。左右には格子のつけられた窓がありまして・・・

 そこからはこんな光景が見えます。そう、ここは朝に眺めた「ため息橋」の中だったんですね。
 先ほど述べたようにDucale宮殿は裁判所でもあったのですが、時代が下がってくると拘置施設が不足してきたのでお隣に新牢舎を建設。法廷のある宮殿と新牢舎とを結ぶ橋がこのため息橋だったわけです。ちなみに名前の由来は、囚人が裁判を終えてお隣の牢屋に移される際、このため息橋からの眺めが外の世界を眺める最後の機会なので皆さん溜息をついたから、だそうです。ここでカサノヴァさんもため息をついたのかしら。

 新牢舎に入ると、恐ろし気な雰囲気が。

 雑居房かしら。

 囚人が描いたのかしらねぇ?

 新牢舎にも中庭があり、中央には井戸が。
 ちなみに、ヴェネツィアのあちこちで同様の広場(Campoといいます。)と井戸を見かけますが、井戸と言っても日本で想像するような地下水を汲み上げる井戸ではありません。ヴェネツィアは埋め立て地なので、穴を掘っても出てくるのは海水だけ。なので、この井戸は雨水を貯水・濾過するための装置なのだそうです。

 さてさて、再び宮殿に戻ります。何やら厳粛な雰囲気の漂うエリアです。

 どこもかしこも宗教画ですねー。

 というわけで出口へ。いやー、キンキラキンと宗教画の毒気でぼーっとしちゃってます。

 ちょっと気分転換でもしましょうか、ということでやってきたのは、Docale宮殿のはす向かいにある鐘楼「カンパニーレ」。まだ午前中だからなのか、入場の列ができてなかったのでスイスイと上に上がれました。ちなみに料金は8.5ユーロです。

  高さ約98.6mのCampanile。上に来ると、ヴェネツィアを一望できます。西側を望むと、サンマルコ広場にサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会が良く見えますね。

 こちらは北側の眺め。手前の屋根はサンマルコ教会。奥に見える島はヴェネツィアン・グラスで有名なムラーノ島です。

 突然、大音響が鳴り響きはじめました。この鐘楼、鐘も生きていてちゃんと鳴るんです。さすがに昔と違って今は機械仕掛けですが、その音量はかなりのものです。
 ヴェネツィアには無数の教会があって鐘楼も結構な数があるのですが、なぜか鳴る時間はまちまち。そのあたり、ゆるーいヴェネツィア時間を感じますね。

 さて、景色を堪能した後は、サンマルコ広場を囲む建物内にあるCorrer博物館を見学しましょう。

 入り口はサンマルコ寺院のお向かい、サンマルコ広場をU字型に囲む建物の底辺部分にあります。Ducale宮殿のチケットと共通(というか抱き合わせ)なので、ワタシは事前にネットで買って印刷したバウチャーのバーコードを示して入場。
 まずは、当時の宮殿の部屋が続きます。

 さすがヴェネツィア。ヴェネツィアングラスのシャンデリアが見事です。

 図書室もありました。

 1500年代の地図帳でしょうか。

 これはどこの島でしょう?

 共和国時代のサンマルコ広場でしょうか?今と建物が違いますね。

 初期のガレー船ですね。

 海戦の様子を描いた絵画。さすが、海洋国家だけのことはあります。

 往年のヴェネツィアの絵地図ですね。

 博物館を出たところでちょうどお昼時。ホテル近くまで戻って、美味しそうなお店を探します。
 ヴェネツィアは町中至る所に食べ物屋さんがありまして、目移りしちゃうほど。しかも、どこもそれなりにお客さんが入っています。
 厄介なのは、たいていのお店はオープンテラス席にメニューを置いてるんだけど、その大半は文字だけ。日本のような写真入りのメニューなんて滅多に見かけません。当然、ワタシのようにイタリア語はおろか英語すら覚束ないヒトは何が出てくるかも分からないわけでして・・・
 そんな中、ホテル近くの裏路地に写真入りのメニューを掲げてくれているお店を発見!すかさず入っちゃいました。

 入ったのは「Bar Nuovo Arcobaleno Snc Di Xu Giulio」という長~い名前のお店。とにかくノドが乾いてたので、まずはビールを1杯いただいて一息つきます。

 続けて、おとなしくスパゲティ・ポモドーロを注文。美味しかったですよ。ビールとパスタでお会計は17ユーロちょうど。お高いようにも思いますが、これでもヴェネツィアでは安い方です。
 ちなみに、ここのマスターはしばしば「美味しいですか?」「おおきに~」などと日本語交じりで話しかけてきました。気さくでいいですねー。

 午後はのんびりとヴェネツィア市街をお散歩したのですが、それは後程まとめてご紹介。

 あちこち歩きまわって疲れたので、夕食はホテルの裏手に見つけた「Osteria ai Schiavoni」でテイクアウトのイカ墨パスタ(7ユーロ。ちなみに店内で食べると9ユーロになります。)をお買い上げ。ビールは午後にお買い物をしたスーパーマーケット「Coop」Castello店でミネラルウォーターと一緒に買いました。
 せっかくのヴェネツィアに来たのなら、星の数ほどあるレストランをあれこれ巡りつつイートインで食事した方がよいと思いますが、一方で、スーパーマーケットのお値段は観光客向けの飲食店よりはるかに安いです。例えば、道端の屋台や飲食店で500mlのミネラルウォーターを買うと1本3.5ユーロくらい(これがCampanileやVaporettoの船着き場などにある自販機だとちょっと安くて1.5ユーロです。)とられますが、スーパーマーケットだと6本入りで1.03ユーロだったりします。また、ビールも500ml1本が0.6ユーロほどなのですからたまりませんねー。日本円で70円のビールですが、味は美味しかったですよ。
 ちなみに、同じお値段で日本じゃあまり見かけないフレーバービールなんかもありました。ワタシはグレープフルーツのビールを飲んでみましたが、これもなかなか美味しかったです。

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