ヴェネツィアにて(その4)

 さて、翌朝もお散歩をしたのですが、その話の前にヴェネツィアの街並みについて説明しておきましょう。
 こちらがヴェネツィア本島の地図(教会でもらいました。)。真ん中のデカイ島がヴェネツィア本島でして、その中央を逆S字に貫いているのが大運河カナル・グランデ(Canal Grande)です。そして本島の中央上にある四角い島はサン・ミケーレ島(Isola di S.Michele)という墓地の島、本島の下にあるのは、右側の小さい島がサン・ジョルジョ・マッジョーレ島(Isola di S.Giorgio Maggiore)、左側の細長い島がジューデッカ島(Isola Della Giudecca)です。地図にはこれだけしか載っていませんが、その外側にはリゾートで有名なリド島やヴェネツィアン・グラスで有名なムラーノ島、レース細工で有名なブラーノ島などがあります。

 上の地図の本島南部を拡大したのがこちら。真ん中よりやや左にある「Piazza San Marco」と書かれている広場がサンマルコ広場です。ちなみに私がお世話になったホテルは真ん中よりやや左側の青丸で31と書かれているあたりにありました。
 この地図で注目していただきたいのは、白い線で描かれた道や広場です。サンマルコ運河に接するSchiavoni河岸は別として、それ以外の道や水路がめっちゃ細いことが分かると思います。
 では、実際の街並みがどのようなものか、お散歩しながら見ていきましょう。

 こちらが典型的なヴェネツィアの小道でカッレ(Calle)と呼ばれます。細いところではリヤカー1台が通るのがやっとという細さです。

 Calleはけっこう曲がりくねっていて、しかも両脇が3階以上の建物なので日差しも届きません。当然、方向感覚が失われます。ヴェネツィアが「迷宮都市」と呼ばれる所以ですね。
 私も何度も迷いましたが、幸い、海外SIMを利用したGoogle MapのGPS機能で「だいたいの」現在地は把握できます。ただ、スマホのGPSも周囲の建物で電波が遮られるのか、あまり精度はよくありませんでした。無いよりはマシですけどね。
 ただ、本気で迷ったとしても実は何とかなります。テキトーに歩いていくと、道のあちこちに「Per S.Marco」とか「Per Rialto」といった黄色の案内板がありまして、その矢印の方向へ歩いていけば(遠くても20~30分くらい。)サンマルコ広場やリアルト橋にたどり着けるのです。

 さて、↑の地図でお気づきかもしれませんが、Calleの端っこは広場になっている箇所が多くあります。この広場をカンポ(Campo)と言います。
 Campoはヴェネツィアっ子の憩いの場。ヴェネツィア中心部のCampoではたいていレストランやカフェがオープンテラスを出していて、昼間からお茶したりビールやワインを傾けている人たちが大勢います。
 一方で、住宅街のCampoは子供たちの格好の遊び場。ボール遊びしたり自転車で走り回ったりしてました。ちなみに、原則として自転車禁止のヴェネツィアですが、子供はCampoの中だけはOKみたいです。

 Calleと同様にヴェネツィア中を網の目のように張り巡らされているのが水路(CanalとかRioっていうみたいです。)です。ヴェネツィアでは自動車が利用できないので、交通手段はこの水路を行き交う舟のみ。古くはゴンドラ、現代ではモーターボートが唯一の貨物や旅客の輸送手段となります。
 そして、水路が多いということは当然橋(Ponte)も無数にあります。

 Calleはこんな建物の隙間にもあったりします。
 入り口の頭上にある看板にお気付きでしょうか?こんな小道も含め、すべてのCalleやCanal、Ponteには名前が付いています。この小道は”Calle Cappello”、つまり帽子小道。この小道の入り口にある看板を帽子に見立てたのか、それともこの道沿いに帽子屋さんがあったのでしょうかね?

 中にはこんな物騒な名前の道も。「暗殺者の路地」とでも訳すのでしょうか(そうそう、普通の道は”Calle”というのですが、運河を埋め立ててできた道は↑の看板にあるとおり”Rio terra”と言うようです。ネットのイタリア語翻訳じゃ出てこないから、ヴェネツィア方言なのかしらね。)?別に物騒な話があったわけじゃなく、単に曲がりくねって薄暗い雰囲気(ヴェネツィアの路地はみんな同じだと思うのですが)が名前の由来らしいです。

 というわけで小道と水路と橋とが組み合わさるとこんなヴェネツィアらしい風景になります。ゴンドリエーレは頭をぶつけそうで大変ですけどね。

 そうそう、ヴェネツィアの井戸が雨水の受水槽だって話は以前にしましたが、現代ではちゃんと水道が張り巡らされていて街のあちこちにこんな水飲み場が用意されています。ヨーロピアンの観光客はここからペットボトルに水を汲んで飲んだりしてましたが、何しろヨーロッパの水は硬水が多いので・・・ワタシはやめておきました。せっかくの旅行を腹下しで台無しにしたくないし。
 でも、ジェラートやジュースを買い食いしてベトついた手を洗ったりするのには便利でしたよ。

 そんなわけで前置きが長くなりましたが、滞在中は毎朝ぶらぶらと街中を散策してました。ある日の朝は、こんな建物にたどり着きまして・・・

 なんと、マルコポーロの生家だそうです。なんか、あまりに普通のお家なので信じがたいですけど・・・

 さらに歩くと、リアルト橋に出ました。
 大運河Canal Grandeをアーチひとつでまたぐ石橋です。

 アーチのてっぺんから眺めるとこんな感じ。早朝なので人っ子ひとりいませんが、日中になると身動きできないくらいの大混雑になります。何しろ、ヴェネツィアのど真ん中ですからね。

 反対側(西側)の風景。この橋の周辺にもカフェやジェラート屋さんなど店舗が立ち並んでいるのですが、その中にフルーツジュースのお店(東京だとエキナカにあるHoney’s Barみたいな感じ。)がありました。キウイやオレンジなどのしぼりたてジュースが1カップ2ユーロ。とっても美味しいので気に入り、ほぼ毎日通ってました。

 アーチの真ん中にある建造物。リアルト橋の象徴みたいな感じです。

 日中は記念写真などとても撮れないくらいの大混雑なのですが、早朝なら独り占めできます。

 橋の真ん中から眺める大運河。美しいですねー。

 ところで、Canal Grandeにはもう一つ有名な橋があります。それがこのアカデミア橋。

 初日の夕方に訪れたのですが、石造りのリアルト橋と対照的に、こちらは木造です。Canal Grandeにかかる3つの橋のなかで木造はここだけです。

 中心部にあって常に原宿竹下通りのような混雑ぶりのリアルト橋と違って、やや外れに位置するアカデミア橋は散歩にちょうど良い感じです。この「アカデミア」とは元々この近くにあった美術学校が由来。現在はヴェネツィア派絵画の宝庫として知られるアカデミア美術館になっています。残念ながら、今回はここを訪れることはできませんでしたが・・・
 うーん、行きそびれたところ、たくさんあるなぁ。

 さてさて、お散歩から帰って朝食をいただいたあとは、最寄りの船着き場S.Zaccariaへ。ここの窓口で予めネット購入しておいたVaporettoの72時間券のバウチャーを渡してチケットをもらいます。
 こちらがVaporettoのチケット。紙製のICカードなのですが、カード上には何も書かれていません。なので、複数枚買ったときは取り違えに要注意です。

 自動車禁止のヴェネツィア本島で唯一の公共交通機関であるVaporetto。運航会社は2つあって、ひとつは初日に空港から本島まで私もお世話になったAlilaguna社。こちらは空港線や離島便が中心で、ヴェネツィア本島内は路線数も本数もちょっと頼りない感じです。
 もう一つが、ヴェネツィア本島をくまなく多頻度で運航しているACTV社のVaporetto。今回72時間券を買ったのもそちらの方。
 運航路線は↑のとおり。ヴェネツィア本島の周囲やCanal Grandeを中心に多数の路線が運航されており、まるで東京の地下鉄のようです。メイン路線である1系統(ローマ広場~Canal Grande経由~リド島の各駅停車)と2系統(1系統の急行線)はそれぞれ12分間隔で運航されているのですが、いつも丸の内線並みの混雑でした。

 S.Zaccariaとかローマ広場(P.le.Roma)のようなターミナルは別ですが、たいていの船着き場はこんな感じ。ちなみに写真はリアルト橋近くのS.Angeloってところです。

 船着き場の入り口には、こんな自動改札機があります。有効なカードをかざすとピッと緑のランプが付いてドアが開きます。ちなみに、改札の係員がいるわけではないですし、降りるときは改札がなくまったくのフリー。また船内でも改札があるわけではないのである意味「キセルし放題」なのですが、たまーに(ワタシの滞在中は1度だけ。)船内で係員が車内改札に回ってきます。カードを渡すと係員がスマホにかざしてチケットが有効かどうかを確認するのですが、このときに有効なカードを持ってない、または乗船時に改札の機械にかざしてなかったりすると、問答無用で52ユーロ(約6,000円)の罰金をとられるんだとか。

 改札でカードをかざしたら、あとは船が来るまで待合室で待ちます。待合室は浮桟橋になっています。

 離島便は大型船が使われますが、多くの本島便のVaporettoはこんな感じ。中央が乗船口で、前と後ろに客室があります。

 ある日の夕方ラッシュ時のVaporetto船内。こんな感じで大混雑です。
 ちなみに、ACTV社のVaporettoの乗船料は区間に関係なく1回7.5ユーロ。24時間乗り放題が20ユーロ、今回利用した72時間券は40ユーロです。もちろん日常の足として使う地元住民用のチケットは遥かにお安いようでして・・・観光客からふんだくってるようですね。何という殿様商売!

 さてさて、前振りが長くなりました。S.Zaccariaから41番のVaporettoに乗ったワタシはヴェネツィア本島の東側をぐるっと回って北側へ。北側の玄関口であるフォンダメンテ・ヌォーヴェで大型のVaporettoに乗り換えて向かった先はブラーノ島です。

 Fondamenta.NuoveからVaporettoで約1時間かかる離島のBurano島。船着き場の前には、ヴェネツィア本島ではあまり見かけない緑豊かな公園がありました。

 船着き場から集落へと向かう道。並木道ってのもヴェネツィア本島では見られない景色です。

 船着き場から徒歩5分ほどで中心部。水路の両脇に歩道がある光景はヴェネツィアっぽいですが、どことなく本島よりもゆとりのある街並みですね。
 Burano島独特なのは、それぞれの家のド派手な色です。カラフルな家々は、漁師さんが帰宅する際に一目で自分の家が分かるようにしたからなんだとか。

 中央にそびえるのはS.Martino教会の鐘楼。ピサの斜塔よろしく、思いっきり傾いてます。そもそもヴェネツィア周辺は砂泥の軟弱地盤なのでこーゆー重量のある建築物を建てるのは不向きでして、傾くのはある意味必然。ちなみに高さ31mあるこの鐘楼、てっぺんは地上の中心部より1.8mずれてるそうです。

 中心部は観光客で大賑わいを見せるBurano島ですが、ちょっと路地を入るととたんに静かになります。のんびりしてていいですねー。

 海辺の公園。緑豊かな公園とカラフルな家々というのはBurano島ならではの光景です。

 Burano島の西側にあるマッヅォルボ島へは橋一つで渡れます。

 Mazzorbo島に渡った橋のたもとにある農園。

 農園にはなぜかこんな現代アートが陳列されてました。

 さてさて、港に戻ってふたたびVaporettoへ乗ります。向かった先は、Burano島から10分ほどのところにあるトルチェッロ島です。

 ヴェネツィア最古の町であるTorcello島。最盛期の10世紀頃には2万人以上の人口があったものの、マラリア流行で一気に過疎って現在では10世帯ほどだそうです。

 船着き場から中心部までは、このような水路沿いの道を歩いて10分ほど。途中にはアコーディオン弾きのおじさんがいたり、のどかな田舎っぽい雰囲気が漂ってました。

 Torcelloの名物Ponte del Diavolo。要するに「悪魔の橋」。欄干が無いからなんでしょうかね?

 水路の行きどまり。やっぱり、寂しい感じですね。

 ヴェネツィア最古の教会であるサンタ・マリア・アッスンタ聖堂(Cattedrale di Santa Maria Assunta)。最初に建てられたのは7世紀、今の建物は11世紀初め(日本だと平安時代)だそうです・・・

 広場を挟んで聖堂のお向かいにあるのが博物館と鐘楼。まあ、当然イタリア語と英語の解説しかないようですので中には入りませんでした。

 こちらが聖堂。中には最古級のモザイクがあるそうです(暑くて中に入る気がしなかったのですが、帰ってから気付いてちょっと後悔。)。

 周りを歩いてみると、こんな円形の遺跡が。後で調べたら、7世紀の礼拝堂の跡だそうです。

 さて、再びBurano島に戻ります。街はずれのカフェで軽くパニーニの昼食をいただいてから、帰りの船までちょっとお散歩。裏路地でこんなにゃんこと出会いました。

 すっかり人馴れしてるのか、ぜんぜん逃げようとしません。いやー、ネコさんまでのどかなんですねー。

 帰りはリド島経由S.Zaccaria直行便のVaporettoに乗りました。普段乗るのと違って、3階建ての大型客船のようなVaporetto。ちゃんとトイレまで付いているのにはびっくりでした。約1時間半の快適な航海を楽しめましたよ。

 その晩のディナーはDocale宮殿の裏路地にあるTrattoria alla Rivettaへ。このお店、ちゃんと日本語のメニューもあるのでとっても利用しやすいお店なんです。橋のたもとにあるためほかのお店のようなオープンテラスが無いのが玉に瑕ですが。
 夕方の早い時間に行ったのですが、ガラガラなのになぜか先客のお兄ちゃんたちと相席にされちゃいました。ちょっとムカついたけど、一人だから仕方ないか。まずは、白ワインとイワシの南蛮漬けをチョイス。とってもお酒が進みます♪

 メインはボンゴレ・ビアンコ。本場のボンゴレはホントに美味しいです~☆

This entry was posted in 旅行<海外>, 食べ物. Bookmark the permalink.

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)