推理作家の歴史小説

 今朝の北関東は曇り。朝の気温は20℃ちょっとでムシっとしています。日中は25℃を下回ったのですが、湿度の分だけ蒸し暑い。夕方は雨が降ったりやんだりで梅雨らしい一日でした。

 ここ最近読んでるのが、こちら。浅見光彦シリーズで有名な内田康夫さんが書いた歴史小説です。
 主人公は寛永寺を開いたことで有名な天海僧正。織田信長が天下統一を推し進める時代を若年期の天海僧正の視点から描いています。「日光殺人事件」でも天海僧正を背景にしていたように、内田康夫さんは強い興味を持っていたようですね。

 内容は教科書でもおなじみ、大河ドラマでもテッパンネタの信長時代を描いた小説ですが、視点を天海僧正に置いたのが面白い。当然その時代に生きているゆえに戦乱に巻き込まれ時代の流れに押し流されずにはいられないものの、それでも当事者ではない醒めた客観性を帯びた視点から眺めた筆致になっています。
 そして、歴史ネタを多く取り上げている(「浅見光彦」自身も歴史雑誌「旅と歴史」のルポライターという設定ですしね。)大衆小説作家だけに、随所に説明や解説がわかりやすく書かれていて門外漢でもすいすいと読み進められます。
 圧巻なのは、後半、本能寺の変へ向かって傾斜していく明智光秀の心理描写と羽柴秀吉の人柄との対比。”陰”を帯びた明智光秀と生来の”陽”である羽柴秀吉の対比を描きつつ、ラストシーンで秀吉の変化の兆しにも触れているのはさすがの一言でした。

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