新聞離れ

 平日は早めに職場へ出勤して始業前にコーヒーをいただきつつ朝刊に目を通すのが日課のワタクシですが、一昨日の経済コラムに衝撃を受けました。

 公益財団法人新聞通信調査会が行った「第13回メディアに関する全国世論調査(2020年) 」によると、30代の月極め購読率は32%、20代と40代ではともに43.1%だそうでして、全体でも61.3%なんだとか。つまり、20代から40代では5人中3人は新聞をとっていないということになります。

 ワタシが子供のころは親が当たり前のように新聞をとっていて(実際、60代以上は今でも購読率が7割を超えています。)中学生くらいになれば毎日読んでいたし、大学生、特に就職活動の時期になると日経新聞を読むのが当たり前と言われていました。採用面接で新聞を毎日読んでいるか質問されるとか、そうでなくても面接での話題についていけなくなるなんて言われていましたね。
 今の採用面接では、新聞よりもネットリテラシーのほうが重視されてるのかしら。

 ↑の調査では新聞をとらない理由についてもアンケートをとったようでして、圧倒的に多い理由は「テレビやインターネットなど他の情報で十分」というもの。10代から50代までの層で7割を超えていました。
 確かに、今やYahooなどのインターネットのポータルサイトを見ればずらーっとニュースの見出しが並んでいるし、新聞社のホームページでも同様です。クリックすれば読みたい記事だけをサッと読めますし、即時性でも紙の新聞を圧倒しています。
 そして、何よりもタダ。月々数千円を払う必要性もなければ、読み終えた古新聞の始末に困ることもありませんからエコとも言えます。

 でもね、ホントにそれでいいの?とも思っちゃうわけですよ。

 インターネットだと、↑に書いたように「読みたい記事だけ」を拾い読みできます。逆に、読みたくない記事はヘッドライン以外目に触れることはありません。最近だとAIが「読む傾向」を分析して興味のない話題は表示すらされなくなってきています。
 例えば、子供のころに「好き嫌いなくちゃんとニンジンも食べなさい。」なんて叱られた記憶のある方も多いでしょう。小学生のころに食べられなかったニンジンもネギも、大人になるにつれて美味しさが分かるようになる。ワタシのように大人になってもセロリはダメなんて人もいるでしょうけどね。食べ物なら好きなものしか食べられなくても「食わず嫌い」で許されるのでしょうけど、情報を選り好みしてしまうと入手する情報は非常に偏ってしまうことになります。でも情報って、いつどんな分野の情報が必要になるかって分かりませんよね。馴染みのない分野の情報が必要になったとき、それを理解するための最低限の知見すらないということになりかねません。
 一方で紙の新聞だと、大きな紙面上に様々な記事が散らばっていて、大小の見出しや見出しに続く概要、そして詳細な記事や社説などの論説、そしてコラムなどがあり、こちらの興味に関係なくパッと目に飛び込んできます。もちろん読者は読みたい記事だけを拾い読みすることもできますがそれでもひととおりの見出しは目に入ってきますし、必要に応じてじっくり読んだり斜め読みしたり、見出しに続く概要部分だけ読むといったこともできます。インターネットに比べて入手する情報の偏りは小さくなるでしょう。そうであれば、興味のない分野についても「ああ、そういえば新聞に載ってたっけな。」と見覚えくらいは頭に残ることになります。この程度でも、あるとないとでは大違いです。

 そして、もっと気になるのは、新聞を読まないと長い文章を目にする機会が圧倒的に低下するということです。
 インターネットの記事って新聞でいえば見出しに続く概要記事レベルのものが大半で、長文の記事は滅多にありません。たまに長文の記事があってもパソコンやスマホの画面ではスクロールしなければ読むことができず、大きな紙面上で記事全体が目に入る紙の新聞に比べて非常に読みづらいです。それに、インターネットの記事は出所が様々でして論理破綻していたり誤字脱字だらけだったりして読む気が失せるものも少なくありません。
 一方で、新聞の記事は訓練を受けた記者が書いていますしデスクの審査も受けています。長文の記事や論説になればベテランの記者による磨き抜かれた文章になっています。紙の新聞を毎日読んでいれば、自然と、品質保証された長文を毎日目にすることになるのです。
 近年、国際調査(2018年国際学習到達度調査(PISA))で日本の子供の読解力が低下していることが示されて騒ぎになりました。文科省の分析では、その原因としてスマートフォンなどでインターネットの触れる時間が伸びた一方で新聞や書籍などに触れる時間が減っていること、その結果インターネットではツイッターなど短文しか扱うことがないため長文に触れる機会が減ってしまっていることが挙げられています。
 これが「ヒトゴト」であれば「ふーん」で済むのですが、これから職場に入ってくる新人さんが軒並み長文アレルギーだったりするとなれば、これは問題です。「えー、こんなに文字が書いてあるの、読みたくない。」なんて言われてもねぇ。挙句の果てに読んでも内容を理解できないとなれば、話になりません。

 冒頭で述べた「新聞を購読していないのが6割」の世代って、まさに子育て中の方が多い世代です。でもそうやって月々数千円をケチった結果、子供にどんな影響が及ぶかをちょっと考えたほうがいいのかも。
 もちろん、代わりに本を読むとか自宅で新聞をとらない代わりに図書館で読むとか代わりの方法はいくらでもあるでしょうけど、一昔前はどこの家庭でも当たり前のようにあった「朝ごはんの席に新聞がある光景」ほど手軽かつ自然に長文に触れられる状況って、そうそうほかにはないと思うんですけどねぇ~

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