英雄の書

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こないだ,「珈琲店タレーランの事件簿」と一緒にブックオフで仕入れたのがこれ。先月末にタレーランをひととおり読み終えて,ようやくこっちにとりかかりました。

 タレーランと違って,こっちはあっさりと1週間で読了。何しろ直木賞作家で文章の質には定評がある宮部さん,それだけでも読みやすさは段違いです。
 で,中身はと言えば「ゲーマー」の宮部さんがしばしばお書きになるファンタジーものでして,そこに現代を「社会問題付き」で織り込んでおります。いわゆる「いじめ」やら「モンスターペアレント」といったキワドイ問題を混ぜながらも「エンターテイメント」という枠をはみ出さずにいるさじ加減はさすがの一言。そして,主人公への愛情あふれるストーリーテリング(このへん,宮崎アニメのヒロインに重なるものを感じますね。)も相変わらずです。何となく,「ブレイブストーリー」と展開は似ていますがね。

 ゲームタッチのファンタジーと言えばファミコン全盛期の頃から「小説ドラゴンクエスト」などの二次創作(当時はこんな言葉自体ありませんでしたね。)の類があふれていましたが,宮部さんのファンタジーは明らかにこれらとは一線を画しています。というより,ゲームのような「剣と魔法の世界」を楽しみにして宮部さんのファンタジーを読むとかなり肩すかしを食うのではないでしょうか。
 宮部さんのは,あくまで「舞台をファンタジーの世界に置いただけ」のれっきとした現代小説なのだと思います。「ICO 霧の城」にしても「ブレイブストーリー」にしても,戦闘シーンなどはわずかで主眼は「人と人」。とことん人の内面にこだわっています。せっかく舞台をファンタジーにしてるんだから,もうちょっとドンパチを描いてもいいのになぁ~と物足りなさを感じるほどで,そこは評価が分かれるところなんでしょうけどね。

 作者のあとがきによれば,本作には続編が予定されているとのこと。そちらも楽しみです♪
 でも,同様に「続編を書く。」とお約束したはずの「初ものがたり」がずっと放置されている(宮部さんも忘れちゃったのかなぁ?)のを見ると,どこまで信用していいのか怪しいものですが…(爆)

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