初島にて５

　去年の秋くらいから業界に流れていたウワサ話。

　半信半疑だったワタクシですが、こないだ行った沖縄で一緒に潜ったゲストさんも
「そうそう、ほぼ確実に会えます。いつまでいるか分からないから、春濁りの前に行っておいたほうがいいですよ～。」
とのことでした。

　素潜り、いわゆるドルフィンスイムなら、御蔵島とか小笠原とかでやってますけど、スキューバダイビングで水中イルカと遊べる場所ってのは世界広しといえども聞いたことがない。おまけに相手は野生動物ですからいつまで初島にいてくれるのかも分からない･･･こりゃー行くしかないですね。

　というわけで、２年ぶりとなるドライスーツを引っ張り出して、えっちらおっちら始発電車で東京駅に向かいました。

東海道新幹線　こだま６３１号　東京(06:33)→熱海(07:16)
列車番号631A　N700系電車(X4編成)

　東海道新幹線に乗るのはホントに久しぶりです。乗ったのはN700系X編成。要するにN700系をマイナーチェンジして走行性能を改良型のN700Aと同等にした車両です。
　新型コロナウイルス騒動のせいか、東京駅出発の時点ではガラガラだったこの列車。でも新横浜や小田原でぞろぞろと家族連れなどが乗ってきて、いつの間にやら満員御礼。政府の外出自粛要請なんかどこ吹く風のようでした。さすがに（ワタシも含めて。）皆さんマスクはしてましたけどね。

　熱海駅には定刻どおりの到着。お迎えは7時50分なので30分ほど新幹線待合室で休憩します。
　熱海駅で降りるのも数年ぶりのワタシ。いつの間にやら駅ビルができたりエスカレーターが整備されたりと、ずいぶん便利になってますね。新幹線コンコースも改装工事中のようでした。
　熱海駅からはお世話になるダイビングショップ「シーフロント」さんの車にピックアップしてもらって熱海港へ。あいにくの曇天でしたが、港脇には寒緋桜が満開。のんびり花見気分で船を待ってたら乗船時刻に。いざいざと初島行きの「イル・ド・バカンス３世」号に乗り込みます。
　ざっと見渡したところ、乗客の７割くらいがダイバーさん。残りの２割くらいが釣り客で、一般の観光客はちらほら程度。乗船率も５割を切ってる感じですねー。やっぱり、新型コロナウイルス騒動のせいですかね。それにしても、新型コロナよりもイルカを優先するダイバーって無敵･･･まあ、ヒトのコトは言えないけど。
　そんなことを考えながら乗船口ちかくの荷物置き場にダイビングバッグを置いてたら、いきなり腕をつかまれてびっくり。誰かと思えば、沖縄で初島イルカを勧めてくれたえりんこさんでした。そういえば、彼女が行きつけのダイビングショップ「サザナミマリン」さんって初島がメインポイントでしたっけね。同じタイミングで同じトコに潜りに行くとはすごい偶然です。

　初島へは熱海港から25分ほどで到着。港ではダイビングサービスの車が待機していて、ダイビングバッグをサービスまで運んでおいてくれます。なので、こちらはサービスまで手ぶらでのんびりお散歩。
　初島で潜るのは６年半ぶりのワタシ。なので記憶はあいまいなのですが、去年の台風の影響か、ずいぶんと様子が変わったように感じました。道すがらガイドさんから聞いた話では、港からサービスへ向かう途中の道には台風の大波で打ち上げられた大きな岩がごろごろしていたそうですし、海の中も海藻がずいぶん減ったんだとか。台風で根こそぎ飛ばされちゃったのと、温暖化の影響もあるのかなぁって言ってました。

　サービスに到着して着替えを済ませたら、さっそくガイドさんからブリーフィング。イルカさんに少しでも快適に長居していただくために設けたローカルルールの説明もありました。
　まず、強力なライトやストロボは使用禁止。以前、ストロボにびっくりしたイルカさんが２週間ほど行方不明になったことがあるんだとか。それ以外にも、イルカさんを驚かせるような水中ホーンは禁止だし、追いかけたり触ったりするのも当然ダメ。もっとも、イルカさんの方から大接近してくれるんですけどね。

Point：ニシマト×２

　イルカさんが定着しているのは、島の西側にある「ニシマト」というポイント。サービスからはワゴン車で人と荷物を運んでくれます。
　エントリーすると、ガイドロープ沿いに－８ｍくらいの場所へ。周囲はテングサの草原になってます。

　待つことしばし･･･でも、来ない。
仕方ないので、もうちょっと進んで－１０ｍくらいのトコへ。でも来ない･･･

　しょぼーんと下を向いたら、中層にいたワタシの足の下を２匹のイルカさんがすいすいと泳いでました(笑)
　大興奮の我々をしり目に、イルカさんたちはそのまま沖へ。

　仕方ねぇなぁ～とばかりに一度だけ戻ってきてくれましたが、ちょこっと遊んでバイバイされちゃいました。
　たったそれだけでも、フツーのダイバーから見れば大興奮なんですけどね。だって、水中イルカってだけでも超ド級のレアものですもん。

　会えたってだけで大喜びのワタシでしたが、ガイドさんは残念顔。そして「会えるかどうかわからないけど、もう１本行きますか？」
　ガイドさんいわく、イルカさんの活動時間は午前中なのでお昼過ぎの２本目は寝てて会えない可能性が高いんだそうです。それを聞いた同じチームの方々は「寒いし、やめとこうかなぁ～」とつぶやいてました。ワタシは行く気満々でしたが。

　とりあえず、サービスに戻って一休み。サービスには古めかしいストーブを置いた採暖スペースもありまして、一足先に潜っていたえりんこさん達が休憩中でした。
　そこで１本目の様子を聞いてみると、彼女たちのチームはイルカさんたちとたっぷり遊べたとのこと。ということは、後から我々が潜ったときは単にイルカさんたちが遊び疲れてたってことみたいですね。うーん、タイミングって大事。

　さて２本目。沖で泳ぐイルカさんの姿を見たガイドさんは「あんまり遊んでくれる雰囲気じゃないなぁ。」
　それを聞いた我々は寒い重いと愚痴を言いながらセッティングを済ませて海の中へ。

　すると、いつもの－８ｍのあたりでイルカさんたちと「こんにちは♪」

　潜る前のダメかも予想はどこへやら。イルカさんたちはたっぷり遊んでから引っ込んで、すぐにまたやって来る、の繰り返し。

（※上の写真をクリックすると動画を再生できます。）
　後でガイドさんから聞いた話ですが、この２頭のイルカさんたちを見かけるようになったのは一昨年の春くらいからとのこと。それでもしばらくは「運がよかったら通り過ぎるのを見かける程度。」だったそうなのですが、それが去年のＧＷくらいからダイバーと遊ぶようになったそうです。

（※上の写真をクリックすると動画を再生できます。）
　よく見るとこの２頭、性格がだいぶ違います。１頭はとってもやんちゃで、ダイバーのまわりをぐるぐる回りながらけっこう激しく遊んでます。一方、もう１頭は、のんびりとダイバーの周りを泳ぎ回る感じ。ガイドさんによれば、やんちゃな方はオスで、おとなしい方はメスなんだとか。でも、この２頭がつがいなのか母子なのかは分かってないそうです。そのうち、子供が生まれたらとっても楽しくなりますねー！

　今回は２本ともイルカさん狙いのダイビングができましたが、普段の週末は「イルカアタックは１本だけ。」というルールもあります。新聞でも騒がれたくらい珍しいイルカさんとのダイビング、普段の週末は大勢のダイバーで賑わうのですが、ポイントのキャパシティーには限界がありますし、イルカさんもたったの２頭ですから相手をする限界もあるでしょう。
　たまたま、今日は普段より空いてたから２本潜らせてもらえました。そして、その２本目でこれだけ遊んでもらえたのだからめっちゃラッキーでしたね。ある意味、コロナウイルス騒動のおかげかしら。

　めっちゃゴキゲンなイルカさんたちのおかげで、16GBのメモリーを使いきっちゃいました。なので、後半はのんびり肉眼でイルカさんたちを鑑賞します。
　カメラ片手に潜ってるとついついモニター越しでしか生き物を見なくなっちゃいますが、よく考えるともったいないですね。ちょっと、反省。

　約40分ほど、たっぷり遊んでもらってエキジット。帰る寸前までイルカさんたちが遊びにやってきて「もう帰っちゃうのー？」って感じでした。
　２本目は行かない～なんて言っていた同チームのメンバーたちですが、上がってからは「もうお腹いっぱい！」「飽きた。」なんてゼイタクを言ってましたね。

　お片付けを済ませたら、港近くの食堂街へ。ガイドさんが席を予約しておいてくれた「さかや」さんに入ります。
　ここの女将さんもガイドさんのようで、「今日はイルカ見えた？」なんて尋ねてきました。「見られましたよー！大満足です！！」と答えながら、美味しい「うみ丼」とビールをいただきます。新鮮な海の幸を楽しめるのも、初島の魅力ですねー。

東海道本線・東北本線　快速アクティー　熱海(17:05)→？？？
列車番号3536E　E231系電車(U541編成)

　夕方、熱海に戻ります。帰りは急ぐ必要がないので、のんびりと鈍行で帰ります。
　以前は東海道線から宇都宮線への直通が無かったので戸塚から湘南新宿ラインに乗り換える必要がありましたが、上野東京ラインができた現在は乗り換えなしで帰れます。片道３時間以上かかりますが、運賃は熱海～小田原間の運賃（片道￥420）＋休日おでかけパス￥2,720なので、往復すると約半額（実際には、休日パスは往路の東海道新幹線には使えないのでもうちょっとかかります。）。グリーン車も片道￥800と格安ですしね。

　普段なら横浜あたりから満席になるグリーン車ですが、今日は二人がけの席がほとんどシングルユース状態（ワタシの席も隣はずっと空席でした。）になるほど空いてました。さすがに在来線ではコロナ騒動の影響が顕著ですね･･･