さよなら大垣夜行

 「大雪になるかも」と騒がれていた今回の南岸低気圧ですが、フタを開けてみると雨。
 銀世界をちょっと期待していただけに、拍子抜けでした。まあ、雪が降ったらその後の凍結が厄介ですから雨でよかったのかもですけど。

 昨日のネットニュースや今朝の新聞に出ていたのが、臨時快速「ムーンライトながら」が廃止になるという記事。
 ワタシもかなりショックを受けた一人です。

 「ムーンライトながら」は東京駅と岐阜県の大垣駅との間を走る快速列車。普通列車扱いの「快速列車」なので特急や急行には利用できない「青春18きっぷ」でも乗車できる(なお、18きっぷは1枚(1回)で「その日の24時を過ぎて最初に停車する駅まで有効」なので、たいていは日付をまたいで最初に停車する駅(時代により横浜~小田原と変遷する。)までの普通乗車券と併用していました。)こと、夜行なので寝ている間に運んでくれ時間の有効利用ができる上に宿泊費も浮く、と貧乏学生や安サラリーマンには強い味方でした。
 もともとは東京駅を23時40分に出発する無名の普通列車(375M,上りは372M)でした。私が高校生だったころは急行用の165系電車を使用していたのですが、これはデッキ付き2ドア車ながらも座席はいわゆるボックスシート。それに平屋建てのグリーン車が2両連結されていました。
 当然全車自由席。春・夏・冬のいわゆる18きっぷシーズンになると、夕方6時過ぎから東京駅には長蛇の列ができ、乗車が始まると同時に車内はすし詰めの大混雑。4人掛けのボックスシートの膝と膝の間にも人が入り込むという具合でしたね。
 18きっぷ利用者ばかりが利用していたように言われていますが、グリーン車を連結していたことからも分かるようにそれ以外の利用客もいました。今と違って18きっぷではグリーン車の利用はできなかったのですが、周遊券やフリーきっぷなど普通乗車券扱いのものならグリーン車も利用可能。なので、ワタシは九州や奈良との往復によくコレのグリーン車を利用していました。周りを見渡すと、けっこう出張中のサラリーマンの姿も見かけましたね。まだ東海道新幹線の「のぞみ」が走る前のこと、朝9時に大阪に到着するには寝台急行「銀河」を利用するか大垣夜行で名古屋から新幹線に乗り継ぐしかなかったですからね。当然、値段の差から大垣夜行を選択する方も多かったでしょう。

 165系の普通列車375M(372M)が快速「ムーンライトながら」となったのは1996年3月のこと。このとき、使用車両もJR東海の特急用車両373系に変わったのですが、貧乏旅行好きの友人の中には「めっちゃ豪華になって、乗っていいのかどうか迷った。」なんて声も聞こえてきてました。
 編成が短くなりしかも全車指定席となったことから定員も減少したため、指定席をとれなかった「積み残し」対策として従前の165系や113系を使用した臨時の無名快速列車(「救済臨」と呼ばれていました。)が品川-大垣間に運転されていました。当然、救済臨は昔ながらのすし詰めとなるわけですけどね。
 実は、この救済臨は定期列車を途中で追い越して終点の大垣駅に先着するダイヤになっていたので、あえてこちらを選択する方も少なからずいました。大垣から西に向かう列車は編成が短く多客期には積み残しが出る(大垣駅での乗継競争対策として一時期跨線橋には「構内10km/h以下」という掲示がされていたほど。)ほどだったので、その対策だったんですね。

 このように一世を風靡した「ムーンライトながら」ですが、同様に18きっぷで乗車できる夜行の普通・快速列車は全国にありました。定期列車だけでも、札幌=函館間の快速「ミッドナイト」,新宿=村上間の快速「ムーンライトえちご」,新宿=松本間の無名普通列車,天王寺=新宮間の無名普通列車がありましたし、多客期の臨時列車としては京都=出雲市間の快速「ムーンライト八重垣」、京都=博多間の快速「ムーンライト九州」,京都=高知間の快速「ムーンライト高知」などのムーンライトシリーズとでも呼ぶべき多彩さを誇っていました。
 ブルートレインが廃止となるのと並行してムーンライトシリーズも次々と姿を消していきました。夜行バスの興隆や深夜帯を運転するコスト,使用車両(臨時のムーンライトは客車牽引が多かった。)の老朽化など様々な要因があるのでしょうけど・・・
 誰も言わないけど、実は国鉄の分割民営化が最大の要因なのではないでしょうか。民間企業になると何より利益追求やコストカットが至上命題となるし、分割されたことで数社を跨いで運転される長距離列車は運賃分配をめぐってますますコストが悪くなる。そこへもってきて18きっぷ利用者が多いムーンライトシリーズは「金にならない客」ばかりですからね。

 でも、夜行列車ならではの旅情や郷愁といったものを感じる機会がなくなってしまうのは何とも寂しい限りです。貧乏な若者が、こういった列車を駆使して全国を旅するというのも、将来の鉄道ファンを獲得する上で大きな先行投資になると思うのですが・・・そんなプライスレスな価値は、民間の営利企業には望むべくもないんですかねぇ~
 なんとも世知辛い世になってきたものです。

This entry was posted in 雑感. Bookmark the permalink.

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)