東光高岳専用線

 年が明けて2日目。
 朝は予報どおりとっても冷え込みましたけど、日中は風もない穏やかな晴天となりました。最高気温はヒトケタ止まりですけど、風がないから昨日よりはるかに暖かく感じるポカポカ陽気。こうなると、昨日引きこもった分だけお出かけしたくなります。
 何もなければ電車に飛び乗ってどこかへ行っちゃうところですけど、残念ながら今日は職場の当直室にオイラの携帯電話番号が貼り出されていて「何かあったら」駆けつけなきゃいけない当番の日。なので、「何かあったら駆けつけられる」範囲でお散歩に出かけることにしました。

 お出かけしたのは、栃木県小山市にある「東光高岳専用線」。
 東北新幹線や宇都宮線のターミナル駅である小山駅から北東ににょきっと線路が伸びていまして、約5kmほど離れた東光高岳の工場まで続いています。
 なんでこんな線路があるかといえば、東光高岳というのは電力設備関連の会社でして小山工場では変圧器などを製造しているんだそうですが、この変圧器というのがとてもトラックなどでは運べないくらい重くてデッカイ代物なんだそうでして、それを必要なところまで運ぶためにこんな線路を敷いたというわけなんだそうです。
 ちなみに、この小山駅からはこの東光高岳専用線以外にも北西に伸びる両毛線沿いに思川河畔まで古川鉱業の砂利採掘のための専用線が一昔前まで存在していました。今でも両毛線に乗車すると思川の鉄橋近くまで南西側に謎の空き地が見えますけど、それがその専用線の跡地なのでしょうね。

 そんな東光高岳専用線。利用されるのは数か月に一度だけらしくしかもその運行日は非公開なのでワタクシもまだ運行シーンをみたことがありません。あまりのレアさ故かしばしば「廃線疑惑」も巻き起こるこの線路をちょいとお散歩してみることにしました。
 なお、上の地図でマークがある部分が以下の写真の撮影地となります。

 さて、スタート地点は宇都宮線と専用線との分岐点。ちょうどよい具合に、分岐点の北側に跨線橋がありました。

 分岐点から北東にカーブしていく専用線。
 ツイッターではちょうどこの辺りの線路に枕木が積まれて車止めが設置されたことがありそれを受けて廃線になったのではというギワクもあったのですが、今は枕木も車止めも撤去されています。

 線路沿いに歩いていくと、ちょっと大きめの通りに出ました。
 一見普通の踏切のようですが、警報機と遮断機に加えて「踏切信号機」が設置されています。
 道路交通法33条で踏切を渡るときには一時停止と安全確認が義務付けられているのですが、同条ただし書きには「ただし、信号機の表示する信号に従うときは、踏切の直前で停止しないで進行することができる。」と書かれています。数か月に一度しか遮断機が下りないのにいちいち一時停止するのはバカらしすぎるので、ご丁寧に踏切信号機が設けられているんですね。この駅東通りの踏切以外にも、ちょっと大きめの通りにある踏切にはちゃんと踏切信号機が設けられていて一時停止しないで通過できるようになっていました。

 さて、踏切の先を見てみると、なんと線路の敷地内は畑になっていて、ハクサイなどが植えられています・・・

 一応、線路の敷地は古川電工(一部区間は東光高岳が所有しているみたいです。)の敷地なのですが、そんなのどこ吹く風で近所の人が勝手に畑にしちゃってるみたいですね。

 線路に隣接する廃棄物業者が物置にしてる個所もありました。
 これじゃ、廃線疑惑が巻き起こるのも無理ないか。

 しばらく歩いていくと、突然、線路が分岐している箇所に出くわしました。
 ネットの情報によれば、ここは機関車を付け替えるための機回しスペース。東光高岳の工場から変圧器を運んできた貨物列車はこの区間を利用して東光高岳の機関車からJR貨物の機関車に付け替える、つまり貨物の引き渡し場所ということになるようです。工場からここまでが東光高岳の運行区間、ここから小山駅方面はJR貨物の運行区間ということですね。

 小山駅からずっと線路沿いの道を歩いてこれたのですが、ここで線路沿いの道がなくなっちゃいました。仕方ないので、北に向かう道を進んでみましょう。

 工場地帯を歩いていくと、線路の方向に向かう脇道がありました。脇道の先には踏切があって、住宅地に続いています。
 でも、相変わらず線路があるのは畑の中。まったく道らしいものはありません・・・

 住宅街を抜けると、イオンモールから続く通りに出ました。この踏切にも信号機も付いていまして、通行する車は減速することなく通過していきます。
 踏切の先には、ようやく線路沿いの道があるようです。

 小山駅に近いあたりでは線路の敷地を利用して勝手に畑をつくっちゃってましたけど、さすがにこの辺りまで来ると土地が余っているせいか「勝手畑」は見当たりませんね。

 線路沿いにはしばしば遮断機も警報機もないいわゆる「第4種」の踏切があります。数か月に一度しか使われない線路だから本来なら全部第4種でいいくらいなんでしょうね。踏切の標識を見たら、緊急連絡先は東光高岳や線路の持ち主である古川電工ではなくJR貨物の宇都宮ターミナルになっていました。

 畑沿いの線路に沿って歩いていくと踏切があって、その先には再び機回しスペースらしきものが見えます。でも残念ながらその辺りには道路がないみたいなので、再び住宅街へ向かいましょう。

 住宅街を抜けると、短い機回しスペースを抜けたところに出ました。

 しばらく線路沿いに進むと、ナゾの貨物ヤードが。

 貨物ヤードの周りを囲む金網にはこんな看板がありました。いざこの専用線で運行される日には、どこかで情報を仕入れた貨物列車ファンが殺到するんでしょうね。

 「貨物基地」にはこんな列車がとまっていました。車体には「変圧器タンク静荷重試験専用車両」と書かれています。実際に輸送する車両をどれにするのか決めるための車両ってことでしょうか?

 同じ貨物ヤード内にはコンテナも数台置いてありました。

 貨物ヤードのどん詰まりはこのようになっておりまして・・・

 通りを挟んだ反対側には東光高岳の工場に線路が続いていました。
 工場の貨物ヤードに試験車両やコンテナが残っていたり踏切に遮断機や信号機が撤去されていないところを見ると、まだまだ廃線にはなっていないみたいですね。
 それにしても、この専用線の運航日時の情報って皆さんどうやって仕入れているのかしら。オイラも見てみたいなぁ~

 時計を見ると、小山駅からここまで約1時間ほど経過していました。ちょうどよいお散歩コースって感じですね。
 さて、東光高岳の工場近くにはコミュニティバスのバス停があります。日中は1時間に2本ほど運行されているようでして、小山駅まで所要20分ほど。運賃は¥200でした。なお、Suicaなどは使えずニコニコ現金払いのみです。

 小山駅のちょっと手前でバスを降りて、再び専用線のスタート地点へ寄り道してみました。
 この東光高岳専用線、数か月に一度しか使われない一方で、線路沿いには駅からやや離れた工場団地や住宅団地、さらにはイオンモールや小山高専といった施設があります。そこでこの専用線をLRTに転用できないかといった議論もかつてはかなり真剣に検討されたそうなのですが、さすがに1時間に2本程度のコミュニティバス(しかもほとんどガラガラ)で十分足りているという現状や、そもそもこの専用線の施設が昭和37年に建設され老朽化が著しい(まあ、これまでの写真を見ればわかりますね・・・)ことからあえなく断念されたんだとか。それに、今は数ヶ月に1往復しか運行されないため信号や閉塞のための設備がまったくありませんでしたけど、さすがに毎日複数の旅客列車を運行するとなるとそういった設備も設けなきゃならないでしょうからね。そのための費用はかなりのものでしょうし。
 でも、その荒れ果てた線路を眺めていると、ふと郷愁とともに
”When the night has come, and the land is dark・・・”
なんてBen. E. Kingの名曲が脳内BGMで流れてきちゃうのはワタシだけでしょうかねぇ~

 お家に帰ると、ちょうど日没時。
 昨日と違って、やや暖かさも感じる夕暮れ時でした。

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